ひとり飲みのお客様と言うと、9割は男性。
女性はほんの僅か。
その数少ない女性のひとりがC嬢。
昨夜もひとりでやって来て、カウンターで飲んでいた。
しばらく世間話をしていたが…
この後、知り合いが来るとのこと。
「友達かな?」と思ったら、
最近できた「彼氏」が来る、と言われた。
………
別に何も無い。
その方に特別な感情を抱いたことも、下心も無い。
なのに、なぜか悲しくなった。
この感じは何なのだろう?
父親が娘に彼氏を紹介された時の感覚か?
まさか自分の彼女を奪われる気分じゃあるまいし…。
不思議な感情に襲われてモヤモヤしている夜は、刺激の強い焼酎を。
造るのは、鹿児島県の本坊酒造。
創業は1872年で、150年に及ぶ歴史がある。
1960年代から焼酎以外のお酒の製造にも取り組んでいる。
その他にも、梅酒、リキュール、ジャパニーズジンまで造っている。
そんな蔵の芋焼酎。
今回は加水していない原酒だ。
黒麹、常圧蒸留。
アルコール度数は37度。
度数の強さが際立つが、それ以上に味の濃さが稀有の一本。
香りも芋感も強い。
味を構成する色々な要素がそれぞれ強く主張してくる。
酒質は重い。
原酒なので旨みも多いが、雑味もあるのだろう。
昔飲んだ芋焼酎って、こんな感じだった気がする。
黒麹でどっしりした、重厚感。
最近流行りの芋焼酎とは、真逆のテイスト。
濃いめの水割りで。
まったく崩れない味わい。
水割りでも、その旨みと芋のクセは十分に感じられる。
お湯割りで。
なんか懐かしい味わい。
個人的にはとても美味しいが、一般のお客様にはどうかな?
飲み手を選びそうな一本だ。
・・・・・
そして、やって来た「彼氏」。
とても気さくで誠実そうな人だった。
ちょっと安心。
ん?
これはやっぱり…
「父親」の感情だな。
あぁ、良かった。
ちょっとドキドキしてしまった。
いい年こいて、何言ってんだか…。
しかし…
これからはひとりで飲みに来ることはなくなるのかなぁ~。
そう思うと、やっぱりちょっとだけ悲しいナ。