東日本大震災から10年が経過した。
毎年この時期には、東北地方のお酒を紹介している。
今年は福島のお酒を。
「廣戸川」は地元を流れる「釈迦堂川」の旧名に由来する。
創業は1892年。
内陸部にある蔵だが、震災で被害を受ける。
建物のダメージに加え、杜氏の板垣氏が心労で倒れてしまう。
そこで蔵の後継者、佑行氏(当時26歳)が立ち上がった。
自らが杜氏として酒造りに挑戦。
幾多の苦難を乗り越え今に至る…。
と、文字で書いてしまえば僅かだが…
その苦労は並大抵のものではなかっただろう。
私には想像するしかできないし、その苦しみを真に理解することは不可能だ。
今回の一本は蔵の定番。
「夢の香」を55%まで磨いた特別純米酒。
太田和彦さんの番組を見ていると、このお酒がよく登場する。
どうやら太田さんも好みの銘柄らしい。
穏やかな香りと米の旨み。
雑味が無くきれいな酒。
爽やかな酸味が果実のようなフレッシュさを醸す。
アフターにも果実の風。
軽く温める。
米の香りがほんわりと立つ。
酸が輪郭を作り、その中に米の旨みが満ちる。
やわらかく滑らかな口当たりが心地よい。
全体に落ち着いたテイストで、飲んでいて安心する。
・・・・・
あれから10年。
その記憶はいまも鮮明に残っている。
本当の苦しみは被災した方にしか分からない。
だから安易な言葉は書きたくない。
それでも東北のお酒を飲むことで、微力ながら応援できたらと思う。
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