「ひやおろし」の季節だ。
最初に紹介するのはこちらのお酒。
同蔵では「谷川岳」という銘柄もある。
豊富な自然、尾瀬の山々から流れる天然水。
自然を大切にしながら、綺麗な酒を造っている。
原料米は兵庫県産三木市三木別所産の「山田錦」を100%使用。
精米歩合60%。
日本酒度+3、酸度1.6。
「ひやおろし」とは。
春先に絞られた新酒の劣化を防ぐために、加熱処理(火入れ)を行う。
その後、ひと夏を越すあいだ、涼しい蔵で貯蔵。
外気と貯蔵庫の温度が同じくらいになった頃…
2度目の火入れを行わず(冷で)出荷する(卸す)ことから「ひやおろし」と呼ばれる。
江戸時代からそう呼ばれているが、近年では…
「荒々しい新酒をひと夏を越して調熟させ、ほどよい熟成状態で出荷するもの」
というイメージだ。「秋上がり」とも呼ばれる。
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冷で。
リンゴ様の立ち香はやや強めに感じる。
口に含むと、滑らかで綺麗な酒質。スッキリした味わい。
熟成感はあまり感じない。含み香は弱い。
燗で。
円やかさが増し、優しい旨み、適度な熟成感が広がる。
すっと身体に染み入るような印象。香りもほどほど。
料理との相性も良さそう。
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ところで…
日本酒について書かれたこの本を繰り返し読んでいる。
この本の中で、著者は「ひやおろし」に言及している。
「日本酒は本来、秋の完成を目指して造られる物」だと言う。
「春先に荒々しいものが、夏にじっくり熟成され、円やかに旨味を増していく。
そして秋上がりを迎える時、本来の日本酒の姿になる」と。
さらには著者は「生酒」などは製品以前の「半製品だ」と言い放っている。
勉強になることがたくさん書かれているが、著者はなかなか手厳しい。
その分、思い入れが伝わってくる名著である。
(普通の純吟)
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