千葉県というと日本酒のイメージはあまり湧かないが、それなりに酒蔵はある。
ただし名の知れた銘柄は多くない。
ウチの店でも初めて千葉の酒を入れた。
造るのは、香取郡神崎町にある寺田本家。
創業以来340年以上の歴史を誇り、現当主は24代目。
有名なのは「五人娘」ブランドで、自然の菌で無濾過の酒造りを行っている。
今回の一本は「香取」というブランド。
特徴は「低精白」
最近は高精白の酒が主流だが、米の旨みを活かすため、あえて削らずに仕込んだお酒。
無農薬米のコシヒカリと雪化粧を90%精白。
昔ながらの生酛仕込み。
日本酒度+4、酸度2.6、アミノ酸度2.6。
最近の主流からは大きく外れたスペックだが、果たして…。
うっすらとコハクを帯びた色合い。
立ち香はあまり感じないが、微かに独特の香りが漂う。
口に含むと酸味を強く感じる。
その後に旨みもあるが、独特な味わいで一般的には飲みづらいと感じるだろう。
90%精白で残るいろいろな味を「雑味」ととるか「旨み」ととるかは微妙だ。
温めると、独特の香りがさらに強い。
酸が立って、酒質が軽くなり、少し飲みやすくなる。
すっきりするが、その分旨みがやや薄れるか。
個人的には常温がベスト。
雑味より旨みを強く感じる。
そして開栓直後より、少し時間が経った方がまろやかになる。
しばらく常温で放置して、味の変化を見てみたい酒だ。
・・・・・
ところで…。
ウチの店には千葉県出身の常連さんがいる。
ピーナッツと砂嵐で有名な八街(やちまた)の出身だ。
しかし彼は洋酒党で日本酒は飲まない。
彼がもしもこの酒を飲んだらきっとこう言うだろう。
「やっちまったなぁ」
八街だけに…。もういいわ。
「自然酒」
店では売りづらいが、自分ではもう少し試してみたい酒である。
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